【HubSpot導入事例】1年間でマーケ経由の商談数・受注数が倍増。成功の鍵は顧客理解&MA活用~株式会社Kaizen Platform~
「顧客体験DX」をキーワードに掲げ、セールスとマーケティング領域のDX支援を手掛ける株式会社Kaizen Platform。動画制作・運用、WebサイトのUI・UX改善、そしてDXコンサルティングの三本柱の事業を展開、クライアントのその先の顧客体験を向上することで、クライアントのビジネスを変革、成果向上を支援している同社では、高い営業力が強みであった反面、体系化されたマーケティング施策が実施できていないという課題を抱えていました。
そこで同社では、コンテンツマーケティングのプロジェクトを立ち上げ、並行してHubSpotの導入を進めました。HubSpotの導入後、コンテンツマーケティングとMAのシナリオをsyncさせながら、マーケティング経由のアポ、商談、受注獲得向上、を実現しています。
プロマーケターの入社とともにスタートした、Kaizenのコンテンツマーケティング
株式会社Kaizen Platform(以下、Kaizen)でCRMを導入し、コンテンツマーケティング施策を手掛けたのは、マーケティンググループマネジャーの肥田雄一朗氏(以下、肥田氏)とマーケターの横山未歩氏(以下、横山氏)です。
肥田氏は2002年より、ソフトウェアメーカーでWebデザイナー兼Webディレクターとしてキャリアをスタートしており、インターネット黎明期からB2Bのデジタルマーケティングに携わってきた熟練マーケターです。まだCRMやMAといったツールが一般的になる以前より、独自に名刺を管理しながらメール配信を行なうといったマーケティングを手掛けており、その後はマーケティングエージェンシーにてB2B顧客のマーケティング支援事業に従事。現在は、再び、事業会社側のマーケターとしてKaizenに入社し、これまでインプットしてきたB2Bセールス&マーケティングのノウハウをアウトプットしています。
一方の横山氏は2年半ほど、toC向けのマーケティング業務を中心に経験したのち、2021年B2Bセールス&マーケティングに本格的に挑戦するためKaizenへ入社しました。肥田氏から教えを受けながら、日々のHubSpotの運用に携わっています。
MAは導入していたものの、計画的なマーケティング施策は実施されていない状態だった
「顧客体験DXで企業課題をカイゼン」を謳い、DXコンサルティングやWebサイトのUI/UX改善、動画事業を手掛ける一方、Kaizen自身のデジタルマーケティングにはあまり力を入れられていないという課題を抱えていました。この課題を入社面談時に聞いた肥田氏が当時を振り返ります。
「デジタルマーケティングのKPIは設定されておらず、振り返りに必要な数値でさえ計測できていない状態でした。多くの施策は実施して終了、例えば、過去イベントの成果を振り返ろうとすると『高評価だった』といった定性的なレポートしか残っていませんでした。MAツールも他社ツールが数年ほど使用されていたのですが、たまに単発でメルマガを配信する程度で、うまく活用できているとは、とても言えない状況でした」(肥田氏)
同社はスドケン(※代表取締役の須藤憲司氏)のネームバリューや発信力、また営業力が強みであるため、マーケティングの課題はしばらく優先度が低いままでした。しかし長期的な目線に立ったとき、デジタルマーケティングを強化しなければ事業は立ち行かないという危機感があったといいます。
「私が入社したのは、まさにKaizenが自社のデジタルマーケティングに本腰を入れようというタイミングでした。できること、やらなければならないことが多くあるなかで、まずは現状把握から始めました。そしてシステムや組織間の課題を現場でヒアリングした結果、まずは、『当たり前のことを当たり前にやれる体制』にすることを最優先としました。SEOであり、コンテンツマーケであり、セミナーの定常的投入など、がそれに当たるわけですが、何よりも、活用されていないハウスリードは相当数ありましたので、既存の見込み客への定常的なアプローチによる商談創出が最も早く成果につながるであろうと確信し、特にコンテンツマーケティングとMAを使った継続的アプローチには力を入れました。
コンテンツマーケティングを実践し見込み客から商談を創出するためには、コンテンツと見込み客を管理するためのツールが必要不可欠になります。いきなり最初から複雑なシナリオを組むのではなく、コンテンツの投入やメルマガ配信を当たり前にできる環境を実現するため、その基礎固めとしてHubSpotへの乗り換えを進めることになりました」(肥田氏)
社内に浸透させること、そして無理なく運用していくためにHubSpotの導入を決定
同社がすでに導入していた他社ツールは、マーケティングコンサル時代に、肥田氏がお客様環境で深く関わっていたこともあり、最も習熟したツールだったため、そのまま活用することも検討したそうです。扱い慣れたツールから、なぜHubSpotへ乗り換えることになったのでしょうか。
「たしかに他社ツールはMAの黎明期は割と使いやすいUIだったと思います。しかし、昨今、多くのMAツールがリリースされる中で、難しい部類のツールになってしまったと思います。導入・ランニングコストも管理リード数が大きくなればなるほど高額になり、エンタープライズ向けになってしまっている印象です。
ツールは私だけが触るものではなく、他のメンバーも使うことを想定していました。ツールは導入することがゴールではなく、成果を出していくことが重要であり、それを支援するものでなくてはなりません。マーケティングエージェンシーでお客様の支援をしていた際に、ツール導入に苦労する実例を多く見てきました。MAツール導入ありきで、目的も明確でない状態で施策を走らせてしまい、そもそも目標にたどり着く訳もないケースや、始めてみたものの、ある一定の成果にたどりつく前に途中で断念したり諦めたりするケースです。
特に、MAも絡めたコンテンツマーケティングは成果がでるまで半年近く掛かることも珍しくないため、自社の目的や規模に合わせ、最適なツールを導入してマーケティング施策の習慣化やルーティーン、仕組みを構築していくべきです。
そういう視点に立った時、私の中では、HubSpot一択でした。というのも、マーケティングコンサル時代に、所謂主要なMAツールは、実践レベルで使いこなしてきたので、機能比較表では見えない仕様や実運用での欠点などは、各社のツールそれぞれ把握していたからです 。今いるメンバー、今後関わるであろうメンバーが最も運用しやすい、それでいてきちんと今後のシナリオ展開に耐えうるツール、また適正なコスト感を考慮した時に、HubSpot以外ありませんでした」(肥田氏)
マーケターの想像ではなく、営業を巻き込み、事実に基づいた顧客像を立てるべき
HubSpotの導入を検討するにあたり、既存のMAツールには、マーケティングに関するアクティビティ(操作やデータの履歴)で、今後の施策に役立ちそうなデータが何も蓄積されていない状態であったため、かえってHubSpotの導入をスムーズなものにしたと肥田氏は話す。また、HubSpotの導入に先立ち、マーケティング施策に必要となるペルソナの設定に着手しました。
「ある程度の確らしさをもって、B2Bのセールス&マーケティングを進めていくには、大きく2つの進め方があると思っています。データドリブンな進め方と、精度の高いペルソナ&購買プロセスから仮説を立てて進める方法です。
データドリブンの進め方は、現状は非常に難易度が高くて、受注者リストとMAのアクティビティを紐づけ、購入したユーザーはどのような行動をしたか洗い出す必要があります。受注、商談に関する充分なデータサンプルがなければ傾向値が出ないのと、分析が非常に高度です。データサイエンティストが必要なケースも出てきます。また突き合わせるMA内のアクティビティ(行動履歴)も一定期間、一定のボリュームがなければできないことです」(肥田氏)
よって、Kaizenで進めるべきは、精細なペルソナ&購買プロセスから仮説を立ててマーケティングの精度をあげていく方法をとるべき、と踏んだ肥田氏は、次はどのようなアクションを起こしたのでしょうか。ポイントは「営業担当の社員を巻き込むこと」だと言います。
「マーケターの想像だけで進めるマーケティングは、無意味です。よくある、営業とマーケティングの断絶を生み出す結果になります。現場でリアルのお客様に接している営業メンバーを巻き込み、現実に則したペルソナと購買プロセスを考えていくことが重要です。誰が、どのように買うのかが定義できていないと、全ての施策は無駄打ちになってしまいます。
まず営業向けにオリエンテーションを実施し、ペルソナと購買プロセス策定に必要な情報を1週間かけて準備するという宿題を出しました。数回フィードバックを挟んだあとに、各メンバーのペルソナを統合させ、全員で取捨選択しながら完成させるため、1つのペルソナにだいたい3週間ほど掛けています。
幸いなことにKaizenの営業メンバーはみな、マーケティング視点を持っていました。そのため、ペルソナを策定する宿題やヒアリングにも率先して応じてくれています」(肥田氏)
B2Bセールス&マーケティングの「軸」となるペルソナから、コミュニケーションに必要なキーワードを選定していく
B2Bセールス&マーケティングの場合、1つの商材の認知から購買までのプロセスに平均して5〜6人が関わるとされています。また一般的に、課題認知、情報収集、評価・選定というステップがある中でステークホルダーがそれぞれのステップでどのように関わっていくのか、イメージしていく流れです。
対象となるサービス・商材を買う人たち(ペルソナ)は、購買に至るまでの、課題認知、情報収集、評価・選定のステップ毎に、課題が異なるわけで、課題に対する解やヒントもステップ毎に定義していかなければなりません。解やヒントとなるキーワードを1つひとつ考えていきます。
「具体的なペルソナを描いたら、そのペルソナのペイン(真の課題)と、なぜそのサービスを購入したいと思うのかを考え、相手の言葉で表現します。Kaizen側の言葉ではないことが重要です。このペルソナの視点で出てきたキーワードやメッセージを、サービス・商材のタイトル、リード文に投入していきます。この言葉は、SEOコンテンツのキーワードや、セールスシートにも使用されます。
一旦定義したら、コンテンツにどんどん投入して、検証を繰り返すことが重要です。一度の定義では完全ではないし、状況は常に変わっていきますから。成果がいまいちであれば、精度が高まっていないということが考えられます。」(肥田氏)
「Kaizenの場合は、スドケンが対外的に、DX関連で色々なメディアに露出し、話しをしていることもあり、購買プロセスにおける初期フェーズ、つまり課題認知に刺さるTOFU(Top of Funnel)のコラム系コンテンツは割と豊富でした。しかし、顧客にインサイト(なぜ今やらなければならないのか)の気づきを与え、それを解決できるのはKaizenであることを提示できる、MOFU(情報収集・評価選定)コンテンツが全く投入されていないことが分かったので、ここを強化することにしました
ライターさんは、業界の知見、IT全般に強いだけでなく、ターゲットに『この施策は今やらないといけない』『この施策にはKaizenしかない』というメッセージを伝えることができる、コマーシャルインサイトまで理解できる方をアサインしました」(肥田氏)
加えて、当初よりSEO対策がなされておらず、キーワード検索から流入させるためのコンテンツが投入されていなかったため、購買プロセスを推し進めるためのコンテンツとは別軸で制作を進めたとのことです。SEOは同社サービスの中でも、デジタル施策が効きやすい動画サービスのキーワードから着手されています。
「動画サービスはこの2年でキャズムを超え、『動画をやりたい』『YouTube広告を出したい』といった明確なニーズがペルソナの中にあるので、SEOで成果を上げやすいと考えました。 この目論見は当たり、動画広告系のビッグワードの多くで上位を獲得、キーワード検索経由のコンバージョン、アポ、商談も激増しました」(肥田氏)
HubSpotを基盤としたコンテンツマーケティング実践により、1年間でマーケティング経由のアポ数、商談数、受注件数が2倍以上に
以前は単発で配信されてきたメルマガですが、今回のマーケティング施策後は各事業部ごとに隔週でコンテンツ投入を合わせたメルマガ配信が定常化できており、この1年間セミナーとMOFUコンテンツを絡めたメルマガ配信は切らさず続けています。なんと、インバウンド施策で獲得したアポ・商談の20%以上はメルマガからの流入だといいます。
「今後も配信の精度を上げていく必要はありますが、第一段階としてはまず上手くいったのではないでしょうか。HubSpot導入以前と比較すると、まず動画事業におけるインバウンド経由アポ獲得数が2020年度比で2021年度は140%、実際の商談は215%に、そして受注が264%へと、大きく増加しました。
その一方で、お客様の中で明確な課題感がイメージされにくい商材であるUX事業は、SEOの効果が得られにくいと予想していました。予想どおり、SEO経由のアポ獲得数や商談数は微増ではあったものの、コンテンツマーケティング経由の受注は2.5倍と大きな成果につながりました。
ペルソナを洗い出したことによる自社コンテンツのクオリティ向上が影響し、案件化できる見込み客をしっかり引き込めていると考えています」(肥田氏)
コンテンツのクオリティ向上に加え、見込み客を管理しメール等でのコミュニケーションを担うHubSpotのUIと手厚いサポートについても高く評価するのは、現場でHubSpotの運用を担当している横山氏です。
「私はKaizenにジョインするまで、一度もMAに触れたことがなかったのですが、ちょっと教えていただいただけで感覚的に使いこなすことができました。カスタマーサポートの方からはすぐに、的確な回答をもらえるため、疑問の解決時間はとても短かいと感じています」(横山氏)
「HubSpotは、プロダクトそのものだけではなく、サポートも含め非常にUXに優れていると思います。これはHubSpotだけでなく、主要なMAツールを実践で使ってきた私の、中立的な目線での意見です。特殊なケースを除き、HubSpotで間違いないと思っています」(肥田氏)
マーケターに求められる「覚悟」と「折れない心」
コンテンツマーケティングとSEO、そしてHubSpotを絡めたコンテンツマーケティングのプロジェクトはチームだけでなく、社内全体でも高い評価を得ているそうです。四半期に1回の表彰では、上半期にノミネートされており、投票者の中には社長からのコメントが添えられた一票も含まれていたという。
「Kaizenは営業力が高い社員が多いこともあり、目に見える成果を出さないと認められないような雰囲気は感じていました。
営業にリードをただ渡すだけでなく、社内メンバーとの情報共有は欠かさずやっています。マーケティング部門の施策や成果は、他部門から見えにくいと思いますし、社内外に成果を示していくことも重要と思っています。そうすることで、自然とマーケターの味方は増えてくるのではないでしょうか。あと、Kaizenでは、マーケティングメンバーの評価も基本、売上に連動していますので、営業と同じ目標を持って進められているのも、ある意味理想的だと思っています」(肥田氏)
取材の最後に、マーケターに求められる資質について伺った。
「私もこれまでのキャリアは順調にきたわけではなく、全くイケてない暗黒期もあったので、偉そうなことは言えませんし、今でもどこかにたどり着いたという感覚もないのですが……。ただ、これまでの事業会社での経験とコンサルで多くの企業をご支援してきた中で1つ言えるのは、自分がやり切るという強い覚悟と、折れない心かなと。もし今までマーケテイングに真剣に取り組んでこなかった企業のご担当の方は、取り組めばやることが単純に増えますし、とても大変だと思います。新しいことをやれば、社内に敵対視する人も出てきます。
しかし、ちゃんとやれば、相応の成果が見えてきますので、中長期的な視点で、周囲から何を言われてもやり抜く意志が必要だと思います。道半ばで諦めず頑張っていただきたいですね」(肥田氏)