中国、ローン返済不能で住宅差し押さえ急増。それでもホームレス問題が起きない理由とは

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中国・広州のマンション

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中国の不動産バブル崩壊による不良債権が金融システムを脅かす中、当局は住宅ローンの支払いが滞った物件の差し押さえや、立ち退きへの法的対応に苦慮していると米紙ニューヨーク・タイムズがこのほど報じた。2023年はローン返済不能となった39万件近くの住宅が差し押さえられたが、同国ではホームレス問題は起きていないとされる。それはいったいなぜなのか。

中国の民間不動産調査大手、中国指数研究院(チャイナ・インデックス・アカデミー)が今年初めに発表した2023年の住宅差し押さえ件数は、前年比43%増加。38万9000件が競売にかけられ、1500億元(208億4000万ドル)相当の9万9000戸が売却された。多くの金融機関が今年上半期も住宅ローンの不良債権増を明らかにしたことで、不動産市場の低迷がさらに深刻化し、マンション価格の下落スパイラルが加速している。

増え続ける立ち退きをめぐる法制度の問題も浮上している。中国東部の山東省青島など一部の都市では、差し押さえ物件が、住人の退去前に競売にかけられることもある。専門家らによると、住人の退去は買い手側に求められるという。

同紙は、「立ち退きや差し押さえの増加は銀行へのさらなる圧力となっている。というのも、銀行はすでに地方政府への貸付や相次ぐ不動産会社の倒産、未完成のまま放置されたマンションを事前購入した人たちへの融資など、不動産ブーム崩壊をめぐるさまざまな損失に直面しているからだ」と解説した。

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中国で建設中の高層ビル

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中国政府は9月下旬以降、景気刺激策の一環として金融機関に対し、不動産開発業者やその他の借り手への融資を増やすよう求めている。だが、その貸し手自身も困難に直面している。

フランスの金融機関ナティクシスのアジア担当チーフエコノミスト、アリシア・ガルシア・エレーロ氏はニューヨーク・タイムズ紙に、「銀行は長い間、中国の政策立案者にとって最良のパートナーであり道具だったが、今や最大の悩みの種になりつつある」と指摘した。

同紙によると、中国政府が大部分を所有する銀行には潤沢な資金があり、不良債権を補うために準備金を積み立てるまでもなく、年間6000億ドル(約92兆5000億円)以上の利益を上げている。この数字は銀行が利益に対して損失を徐々に償却できることを意味する。だが、銀行は国家財政の約1%に相当する所得税や取引税、配当を財務省に支払っているため、多額の損失が発生すれば、銀行の利益と政府の歳入に打撃になりかねない。

一方、差し押さえは政府にとって特にデリケートな問題だという。タイムズ紙によると、当局は銀行に対し、人民の抗議活動が起きるような可能性のある物件については、債務者に対する強硬手段を避けるよう圧力をかけている。

そんな状況で中国ではホームレス問題は存在しないか、少なくとも顕在化していない。同紙はその理由について、差し押さえ物件のほとんどは購入者のセカンドホームで、入居者は親族や友人だとしている。

2018年のリーマンショック後の2009年から10年にかけ、米国では280万件以上の物件が差し押さえられ、マイホームを失った債務者の多くがホームレスになった。だが、徹底した個人主義の米国とは違い、中国社会の根底に家族主義があることがホームレス問題を生まない理由だと専門家はみる。

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建設中の中国のマンション群

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差し押さえ問題については、今後数年間で解決へと向かうとする楽観的な見方もある。その要因の一つは、多くの住宅購入者が住宅ローンの一部を繰り上げているか、多額の頭金を支払っていることだという。マンション価格が大幅に下落した今でも、多くの人が依然として住宅ローン残高を上回る価値の物件を所有しているからだ。

例えば、2017年に青島のマンションを20万ドル(約3000万円)で購入したというリン・チェンさん(32)はタイムズ紙に、同物件の価値は現在13万5000ドル~15万ドル(約2000万円~2300万円)まで下がったと推定。だが、チェンさんはこれまで現金に余裕がある時はローン返済を前倒ししてきたため、残金は8万4000ドル(約1300万円)となっているとし、いつかまた不動産価格が上昇することを期待していると語った。

そんな中、住宅ブーム崩壊により取り残された未完成マンション群も深刻な問題だ。中国全土で少なくとも700万戸のマンションが未完成のまま放置され、スイス最大の銀行UBSのアナリストらは、これらマンションのうち400万戸が総額約3500億ドル(約54兆円)相当の住宅ローンを組んでいると推定する。これは中国の銀行のバランスシートにある住宅ローン全体の7%近くに相当。そのため、規制当局は未完成マンションの住宅ローンを差し押さえないよう示唆しているという。

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