メルセデス・ベンツCEO、オラ・ケレニウスは、企業は自動車業界の「ダーウィンの」戦いの中で、「革新し続ける」必要がある、と述べた。
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- メルセデス・ベンツのオラ・ケレニウスCEOは、各自動車メーカーは中国に勝ちたいのであれば、本腰を入れる必要があると述べた。
- ケレニウスは自動車メーカー間の競争を「進化論的価格戦争」と表現した。
- 一方、フォードのCEOは5月に中国を訪れ、同国の自動車業界を「存続に関わる脅威」と呼んだ。
メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)やフォード(Ford)のCEOたちの最近の発言から判断すると、欧米の自動車業界は今、存続をかけ、中国の競争相手との重要な戦いの真っ只中にある。
メルセデス・ベンツのオラ・ケレニウス(Ola Källenius)CEOは10月2日、ベルリン・グローバル・ダイアログ(Berlin Global Dialogue)会議のパネルディスカッションに登壇した際、中国がEV市場にもたらす脅威について尋ねられた。
ケレニウスはEVの方が生産コストがかかるにも関わらず、中国の顧客はEVを内燃機関の自動車よりも安く買うことができると指摘した。
「それはおかしなことだ。進化論的価格戦争、市場の浄化だ。そして今は参加しているプレーヤーの多くは、5年もすれば、姿を消してしまうだろう」とケレニウスは述べた。
「市場統合の段階では、資金が枯渇して価値が破壊され、ピラミッドの上位に位置する企業ですらも影響を受ける」
だが、各自動車メーカーは、このような市場の混乱に直面しても「立ちすくんだ」ままであってはならないとケレニウスは付け加えた。
「神経を研ぎ澄まし、投資を続け、革新を続け、進化論的な戦いが終わる時に残っているのが自分たちであることを確実にしなければならない、それが、我々の注力していることだ」とケレニウスは述べた。
Business Insiderは通常の営業時間外にコメントを求めたが、メルセデス・ベンツのケレニウスCEOの代理人からは回答がなかった。
中国の競合他社について警鐘を鳴らしている大手自動車メーカーのCEOは、ケレニウスだけではない。
ウォールストリート・ジャーナルの9月14日の報道によると、フォードのジム・ファーリー(Jim Farley)CEOは5月に中国を訪問した際、同国の自動車業界を「存続に関わる脅威」であると見ているとある役員に語ったという。
中国市場のアグレッシブな進歩に注目したフォード幹部は、ファーリーCEOだけではなかった。
2023年初め、ファーリーとジョン・ローラー(John Lawler)CFOは中国を訪れ、中国の国有自動車メーカーである長安汽車(Changan Automobile)が製造した電気SUVに試乗した。
簡単なテスト走行で、ファーリーが運転し、ローラーは助手席に乗った。両者とも中国製EVのクオリティーに衝撃と感銘を受けたとウォールストリート・ジャーナルは報じている。
ローラーはテスト後、ファーリーに「ジム、以前とはまったく違うな」と言ったと報じられている。
「彼らは我々よりも先を行っている」
EV市場での競争では、欧米の自動車メーカーは終始、中国のメーカーに遅れをとっている。
BYDなどの中国の自動車メーカーは、タイなどの東南アジアに進出しており、ブラジルやメキシコなどの新興市場へも進出している。
テクノロジー企業のABIリサーチ(ABI Research)がまとめたデータによると、中国の自動車メーカーは今年の第1四半期、タイのEV市場で70%を、ブラジルでは88%占めていた。
中国の自動車メーカーの台頭はとどまる気配がなく、欧米諸国の政府を関税という形の介入へと駆り立ててきた。
5月、アメリカ政府は中国の自動車メーカーに対し関税を課した。厳しい貿易制限によって、中国は事実上、アメリカの自動車市場から締め出された。欧州連合(EU)も1カ月後に、関税を導入した。
注目すべきは、メルセデス・ベンツのケレニウスは、競争を抑制するために貿易制限を設けることを良しとしてはいないということだ。
「関税を上げないでくれ。私は逆張りだ。関税は引き下げた方が良いと思う」と、ファイナンシャル・タイムズに3月に掲載されたインタビューで、ケレニウスは語った。
「それが市場経済というものだ。最後まで戦おう」とケレニウスは付け加えた。