アマゾン(Amazon)のアンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は週5日オフィス勤務の義務化を社内発表した。
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Business Insider編集部は、アマゾン(Amazon)が倉庫作業員らを除く従業員に週5日のオフィス出社を要請する社内文書を、独自ルート経由で入手した。
同社のアンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は9月16日、2025年1月から適用されるより厳格な職場復帰命令(RTO)を社内発表。文書には次のような記載があった。
「当社はパンデミック発生前のオフィス勤務形態に回帰することを決定しました。同じオフィスの中で勤務することで得られるメリットは大きいと、当社としては引き続き考えています」
同社の従業員からは職場復帰命令の厳格化を行き過ぎと批判する声も挙がっているが、それは別記事で触れることにして、本記事では今回の社内発表に伴って会社側が用意した、ある意味周到すぎるほどよくできた「よくある質問(FAQ)」の全文を紹介したい。
22項目から成る質問の一番最後の回答を読むと、アマゾンはリモートワークを原則廃止しただけでなく、年間最大4週間の完全リモートワークを可能としてきた(そして同社のフレキシブルな勤務体系を象徴する制度と称賛を受けてきた)オプションも廃止することが分かる。
なお、本記事の内容に関してアマゾンにコメントを求めたが返答は得られなかった。
よくある質問(FAQ)
【Q1】従業員のオフィス出社頻度はどの程度を想定しているのでしょうか?
パンデミック発生以前のオフィス勤務形態に回帰することになります。(新型コロナ感染拡大以降の)5年間を振り返ってみても、オフィスで同僚と一緒に仕事をすることのメリットは大きいと考えます。
したがって、一般的な想定として、平日5日間勤務するとすれば、5日間オフィスに出社することになります。
時に在宅勤務できる柔軟性を必要とする可能性があることは認識しています。例えば、お子さんが病気だとか、家庭の事情で緊急対応が必要だとか、周囲に妨害されず集中して数日間でコーディングを完了させる必要があるとかがそれです。
そうした場合、パンデミック以前と同様、直属の上司であるマネジャーと積極的にコミュニケーションを取ってください。
【Q2】パンデミック期間中に入社したので、「パンデミック以前と同様の勤務形態」が何を指すのか分かりません。
パンデミック以前、当社の従業員は全員オフィス出社して勤務していました。一般従業員とマネジャーは互いにどこで仕事をしているのか、積極的に連絡を取って伝え合っていました。
当時から必要に応じて柔軟な働き方は可能でしたが、原則として毎日オフィスでの勤務が求められており、従業員も実際にそうしていました。
【Q3】新たな勤務形態はいつからスタートしますか?
すでに一部のチームはこの(週5日オフィス出社の)形で勤務しており、全ての従業員にできるだけ早く対面勤務に移行するよう推奨しています。
もちろん、新たな勤務体系への移行に時間がかかる従業員がいることも当社としては認識しており、(現実的なスケジュールとして)2025年1月2日からの平日フル出勤を想定しています。
【Q4】週5日オフィス勤務の開始に伴い、各従業員にワークスペースもしくはデスクが割り当てられるのでしょうか?
パンデミック以前に個々の従業員にワークスペースを割り当てる仕組みを採用していた本社(シアトル・ピュージェット湾地域およびアーリントン)をはじめとする拠点では、固定のデスクを利用できます。
一方、パンデミック以前に固定のデスクを割り当てないアジャイル・シーティング(フリーアドレス)を採用していた欧州をはじめとする拠点は、引き続きその方式で運用します。
【Q5】パンデミック以前に固定のワークスペースもしくはデスクが割り当てられていた拠点に関して、オフィスの準備が完了するのはいつ頃になりますか?
従業員の大部分に関しては、2025年1月2日までには固定のワークスペースもしくはデスクの利用が可能になります。不動産・設備部門(GREF)から今後数週間以内に、各拠点ごとのより詳細なスケジュールを含むアップデート情報を提供する予定です。
仮に固定ワークスペースの割り当てが上記の期日までに完了していない場合でも、同日には全従業員が週5日のオフィス出社を始めている流れを想定しています。
【Q6】一部の拠点でアジャイル・シーティング方式を維持する理由は?
アジャイル・シーティングが望ましいチームも社内には存在します。個々のワークスペースとチームのコラボレーションをバランス良く共存させる「チーム・ネイバーフッド」のコンセプトを軸に設計された、柔軟性が高くコラボレーションに適した環境を確保できるからです。
固定のデスクを設定しないアジャイル・シーティング方式のワークプレイスは特定のチームに適用され、そこでは従業員が自由に移動して、チーム内のさまざまな取り組みに流動的に参加することができます。
こうしたネイバーフッド(との交流)を担保したアジャイル・シーティングを望ましいと考えるチームは多く、パンデミック以前からこうした方式を選択するケースは増えています。
【Q7】従業員カードによるデータ管理は今後も維持されるのでしょうか?
はい。ただし、いずれそれが必要なくなる日がやって来ると期待しています。
当面は従業員カードによるデータ管理を継続することで、週5日出社への移行期間中もその進捗状況の追跡や従業員・マネジャー間の対話サポートに役立つと考えています。
【Q8】従業員カードによるデータ管理はどのように機能しているのですか?
一般的に、従業員カードで追跡するデータは、従業員の皆さんが当社の管理する建物に入館した期日を可視化します。ここで言う「建物」には、オフィスビルやデータセンター、フルフィルメントセンター(物流拠点)、デリバリーステーション(配送拠点)が含まれます。
また、カードの追跡データには、病気や休暇取得など有給休暇(PTO)の申請情報も反映されます。
【Q9】従業員カードのデータには出張も反映されますか?
商用の出張(すなわち当社管理の建物に入館して従業員カードをリーダーに読ませていない日)や社外のカンファレンス参加、取引先訪問で直行直帰の場合はデータに反映されません。所属部署の上司に所在を報告するようお願いします。
【Q10】有給休暇の対象ではないけれども、オフィス勤務できない日はどうしたらいいでしょうか?
在宅勤務を選択できるフレキシビリティが必要なケースが時にあることは当社としても認識しています(例えば、あなた自身やお子さんが病気だとか、家庭で緊急対応が必要な事態が発生したとか、数日間周囲と隔絶された環境にこもってコーディング作業を完了させる必要があるなどの場合です)。
そうした場合、直属の上司と連絡を取り、なぜその日在宅勤務する必要があるのか理由を伝えてください。
【Q11】体調が優れない場合でもオフィス勤務しなくてはならないでしょうか?
病気の場合は回復するまで自宅で静養してください。病欠や他の理由で休暇を取る場合は通常と同じように上司に報告してください。
自身の体調は回復に向かっているものの、出社すれば同僚に病気をうつす懸念がある場合、その日ごとに在宅勤務すべきかどうかを直属の上司と相談してください。
【Q12】従業員として正しいこと、必要なことをやろうとしていますが、どうしても数週間オフィス勤務できない日が続く場合、どうしたらいいでしょうか?
従業員の大多数が正しい行為を選択していること、すなわち職場復帰命令(RTO)の意図するところに従って、何らかのやむを得ない状況がある場合には従来のルール通りマネジャーとコミュニケーションを取ろうとしていることに感謝します。
これまでと同様、会社の求める要件を満たさない従業員については、直接の対話を通じて、必要なサポートを確実に受けられるようにするとともに、オフィス勤務の重要性を確実に理解してもらえるよう取り組みます。
【Q13】出勤先として割り当てられたオフィスに、同じチームのメンバーは自分だけもしくは数人しかいないというケースにも、今回の変更は適用されますか?
はい。たとえ同じ業務を担うチームメンバーがオフィスにいない場合でも、他の(チームに所属する)従業員たちと同じ職場で働くことで、当社のユニークな企業カルチャーをより深く理解し、より深く関与できるようになると考えています。
各チームのマネジャーには、可能な限り多くのメンバーに物理的に同じ場所で働いてもらうよう推奨しています。
【Q14】特例措置ポジションの従業員に今回の変更は適用されますか?
いいえ。デザインやバーチャル専門の役職、リモートワーク特例、軍人配偶者リモートワーク特例措置の対象者に関しては、今回の変更は適用されません。
【Q15】リモートワークの特例措置を申請するにはどうすればいいでしょうか?
リモートワーク特例措置の適用を申請する方法については、(従業員向けの社内ツールを提供する)「Amazon A to Z」サイトを参照してください。
なお、特例措置の適用を受けるには、(CEOを中心とするアマゾンの最終意思決定機関である)Sチームの承認が必要になります。
【Q16】各種通勤手当について教えてください。
アマゾンは従業員のフレキシブルな通勤に資するよう、さまざまな通勤手当やサービスを提供しています。利用可能な手当や補助は、同国内でも拠点によって異なります。
米国内拠点に勤務する従業員の場合、(アマゾン従業員の交通関連ソリューションを集約した)「マイコミュート(MyCommute)」のアカウントを開設してログインすれば、利用可能な通勤手当やサービスに関してより詳細な情報を得られます。
米国を除く米州、欧州中東アフリカ(EMEA)、アジア太平洋(APAC)地域の拠点に勤務する従業員の場合、「グローバルベネフィット(Global Benefit)」ページにアクセスすれば、所属する拠点の通勤手当を確認できます。
【Q17】オフィスへの通勤手段にはどのような選択肢がありますか?
サステナビリティ目標に沿って自家用車による単独通勤への依存度を最小限に抑える方法を含めて、多様な通勤手段を引き続きサポートしていきます。
通勤手段の選択肢は拠点によって異なるため、GREF(不動産・設備部門)サイトの通勤関連ページを参照して、所属する拠点で利用可能な具体的交通手段を確認してください。
公共交通機関は今後も多くの人々にとって最善の選択肢であり、当社従業員にも第一の選択肢として推奨します。
現在シャトル送迎サービスおよび(もしくは)ライドシェアリングサービスを提供している拠点に関しては、既存ルートの運行本数の増加やルートの多様化、乗車定員の拡大に取り組んでいるところです。
また、現時点で十分多様な通勤手段を用意できていない一部の新拠点については、今後ライドシェアリングサービスの充実化を進める予定です。自転車やEバイク(=電動アシスト付き自転車)も引き続き選択肢となります。
【Q18】不動産・施設部門(GREF)が取り組んでいる、社内会議室の安定供給の取り組みについて教えてください。
既存の拠点に関して言えば、ITサービス部門と協力して予約システムと利用方法の改善に取り組んでいます。
会議室の稼働率が1日平均50%を超えている拠点を中心に取り組みを進め、ここまでの成果として、世界全体で1カ月当たり7万5000時間分、キャパシティを拡大できました。
取り組みの具体的な中身としては、誤予約の削除、チェックイン・チェックアウトツールの必須化、参加人数など規模に応じた効率的な会議室利用を徹底するための適切な予約の呼びかけが挙げられます。
(ビデオ会議など周囲を気にせず使える)電話ブースに関しては、面積的に余裕があるもののブースを十分に用意できていない拠点について、この9月から追加設置に着手しました。来年にかけて継続的に増設を進め、世界で約3500ブースを整備する計画です。
今後オフィス勤務する従業員が増え、それに応じて会議室の需要も高まっていくことが想定されるため、新たな拠点オフィスでは会議室を従来より増やしたレイアウトを採用していきます。
【Q19】障害を抱え、毎日のオフィス通勤および勤務に際して便宜を図ってもらう必要があります。どんなサポートを受けられますか。
当社は今後も引き続き、障害を抱える従業員の方々と協力して、職場で必要とされる便宜や調整を具体化し、サポートを強化していきます。
健康状態や障害が職務遂行能力にネガティブな影響を及ぼしている場合、24時間365日利用可能なセルフサービス機能を使って、障害・休暇サービス部門に便宜提供などを要請できます。
医療面での便宜提供を要請する場合は、(前出の「Amazon A to Z」にログインしてから)「MyHR」にアクセスしてください。ライブチャットや電話を通じて利用可能なオプションに関する詳細情報を得ることもできます。
【Q20】育児中の従業員がオフィス勤務時に受けられる便宜は何かありますか?
母乳をさく乳して保存しておきたい従業員向けのサービスを提供しています。 詳細については、従業員向け「インサイドアマゾン(Inside Amazon)」にログインして「グローバル・ラクテーション・アコモデーション」ページを参照してください。
質問などについては、「MyHR」にアクセスして問い合わせてください。
【Q21】育児やペットの世話、高齢者ケアなどに関する福利厚生サービスにはどんなものがありますか?
高齢者ケアの各種サービスやペットシッターへのアクセス、信頼できるケアギバーを探せるオンライン人材紹介サービスの会員権を無償提供しているオフィス拠点もあります。詳細は「ベネフィット」ポータルにアクセスしてください。
【Q22】年間最大4週間、国内どこでもリモートワークできるオプションは今回の変更後も維持されますか?
いいえ。今後、従業員が割り当てられたオフィス以外の場所で長期にわたって勤務するフレキシビリティを必要とする場合は、上司であるマネジャーと相談する必要があります。
申請の対象期間が3週間を超える場合、従業員とマネジャーの間でオフィス外勤務を(より)短期に調整できないか相談してください。
マネジャーの同意が得られれば、「MyHR」経由で短期のオフィス外勤務を申請できますが、その場合でも追加の上長承認が必要になる可能性もあります。