2024.01.30 UP
ラップで上達する英語音読レッスン!Vol.3
『HIP HOP ENGLISH MASTER』刊行記念連載!
2023年8月に『HIP HOP ENGLISH MASTER』(Gakken)を刊行した、ラッパーのMEISOさん。実は通訳者・翻訳者としても活躍しており、日本会議通訳者協会主催「同時通訳グランプリ2019」ではグランプリ、「B-BOY PARK2003」ではMCバトル王者という異例の2冠を達成しています。本の出版を記念して、『通訳翻訳ジャーナル』のWeb連載にて、実際にビートを使ったレッスンをしていただきます!
収録ビートは全て書籍のためのオリジナル楽曲
前回は例文ラップのこだわりについて話しましたが、今回は『HIP HOP ENGLISH MASTER』の心臓とも言うべき「ビート」について話したいと思います。こういったタイプの教材を作る場合、普通なら、音声教材製作の得意な人や会社に発注したり、それっぽいビートを売っているサイトを検索したりするのだと思います。でも今回は、「ヒップホップヘッズ(マニア)にも、英語学習者&ヒップホップ初心者にも、音楽としてまず満足してもらいたい!」ということを第一に考えました。ビートをいわゆる「BGM」にしたくなかったのです。ヒップホップの精神の中心にあるのはFRESHの精神(カッコ良さ)。そこに背中を向けて「HIP HOP」とタイトルに入れることは「決して譲れないB-BOYの美学」(「B-BOYイズム」/RHYMESTER より)に反しているのです。
「どうせ夢見るならBIGに!」ということで、まずは現実的かはそっちのけで理想のビートメイカー陣でドリームチームを作りました。「この人にやってもらえたら最高!」と言う人を次々リスト化。楽しすぎる妄想ノンストップ。ひと段落して編集のEM島さんと冷静にリストを見ると「いやいや無理でしょ〜(笑)」と。でも「これが叶ったら凄すぎる!」と、あまり冷静になれないまま、リストの上の方からお声がけスタート。すると…意外なことに次々OKが!企画を珍しがってくれたのか、なんと上の方から4名全員にご快諾いただけました(涙)。
とんでもないメンツが集結することが決まり、緊張感はMAXに。まずは改めて依頼の趣旨を説明しました。「英語ラップ教材に適したBPM90で、あとはセンスを信じていますのでお任せします!」と熱量高めでシンプルなリクエスト。かくしてHIPHOPマニアが唸り、同時に初心者にも乗りやすい極上のビート群が揃ったのです。しかも全てがこの書籍のためのオリジナル楽曲。どれも最高にFRESHで、「このビートをどう乗りこなそうか」と、ラッパー魂に火が付き、英語ラップの録音はとても楽しいものになりました。改めて感謝です。本当にセンスの塊みたいなミュージシャンばかりなので気になった方は楽曲音源の方も是非チェックをお願いします!
Lesson3 【get】
では今月のレッスンです。今回はget。「ゲットだぜ」「ゲッツ」など、英語に普段それほど触れない人でも耳にすることの多い単語ですよね。また「ゲットする」を省略した「ゲトる」なんて若者言葉a.k.a.スラングもいろんなところで耳にします。英会話でももちろん頻出し、いろんな場面で使える便利な言葉ですが、単体だとご存じのように「入手する」の意味が基本。その他にもget toで「到着する」の意味で使われるなど、他の言葉との組み合わせでさらに様々な意味を持ちます。
ビートはDJ Mitsu the Beatsさん。
(書籍にはSTUTS, EVISBEATS, DJ Mitsu the Beats, Eccyによる16の極上オリジナルビートを収録)
下の再生ボタンを押し、ラップを聞いた後の空白でビートに合わせて英語ラップをしてみてください!
🎧Lesson3-1
【get back】
get back:戻る、(get back to~で)〜に連絡をする
【Let’s try】
If I get back home early today,
イフアイゲットベアックホウムアーリィトゥデイ
let’s get back to work right away.
レッツゲットベアックトゥワ〜クライタウェイ
I really need to get back on track.
アイリアリニードトゥゲットベアックオントレアク
Let me get back to you again later.
レットミーゲットベアックトゥユーアゲンレイタァ
【訳】
今日早く帰宅したら、/すぐに仕事に戻ろう。/元の軌道(ルーティン)に戻らなくちゃ。/またあとで連絡するよ。
【解説】
get back toは「折り返し連絡をする」の意味。I’ll get back to you later.「後で折り返し連絡するよ」などと使う。また、get back to 〇〇で、場所だけでなく一度離れてしまった習慣や仕事に戻ると言う意味でも使用可能。発音面ではget backはgetのt音が消えるかほとんど聞こえなくなる。このようにある条件下では特定の音が発音されない。詳しくは書籍の[Skill4 脱落]に記載。
🎧Lesson3-2
【get down】
get down:降りる、〜を落ち込ませる、(get down to〜で)〜に取りかかる
【Let’s try】
I need you to get down from there.
アイニーヂュートゥゲットダウンフラムゼア
Don’t let the past get you down.
ドウントレットザペアストゲッチューダウン
Once you get down here,
ワンスユーゲットダウンヒアァ
let’s get down to business.
レッツゲットダウントゥビズニス
【訳】
そこから降りてきてほしいんだ。/過去を振り返って落ち込まないで。/君がここに降りてきたら、/仕事に取りかかろう(本題に入ろうか)。
【解説】
高いところから飛び降りそうな人を説得している映画のような1シーン。1ライン目のneed you、2ライン目のget youは隣り合う音がくっついて「ニードユー」が「ニーヂュー」に、「ゲットユー」が「ゲッチュー」になる。単語の後にyouまたはyourが続く場合によく起き、前の語末の子音と合わさる形で音が変化する。詳しくは書籍の[Skill7 同化]をチェック。
今回は発音系の解説が多めになりましたが、この辺りはやはりテキストだけだと伝わりづらいので、是非サンプル音源で繰り返し聞いて、耳で、体で感じて練習してみてください。「聞いて→発音して」のサイクルを回すことで感覚を掴めるようになります。
You’ve got this! (君ならできる!)
ではSee you next episode!
【試聴】HIP HOP ENGLISH MASTER (SAMPLE MIX)
【書籍紹介動画】『HIP HOP ENGLISH MASTER ラップで上達する英語音読レッスン』
【Podcast】HIP HOP ENGLISH SCHOOL(ヒップホップ ・イングリッシュ・スクール)
-MEISO&EM島
MEISOと、編集者のEM島がおくる、ラップを通して「世界」と「英語」を学ぶ、ヒップホップ エデュテインメントプログラム。
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日本生まれ。幼稚園まで米国で育ち、小・中・高は日本で過ごす。ハワイ大学卒。アニメーション制作会社の社内通訳者で、通翻訳チームのリーダー。CGアニメ・映像制作を中心に通訳として活動。2019年、日本会議通訳者協会主催「同時通訳グランプリ」でグランプリを受賞。またラッパーとしても「B-BOY PARK2003」MCバトル王者として知られる。アルバムを5枚リリースし、最新作は「轆轤」(2017)。「ENGLISH JOURNAL」に「英語でラップを学ぶ〜Rap in English!」を寄稿。