米国時間の9月3日、ボストンのコンベンション&エクシビジョンセンターにてHubSpot社主催のマーケティング・営業カンファレンス「INBOUND 2019」が開幕。6日までの会期中、374ものセッションが用意されており、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスに関する最新事例やソリューションのアップデートなどが共有される。8回目を迎える今回は、26,000人以上の参加者が集まった。
「最高の顧客体験」と「多様性」が必須の時代へ
4日に行われたキーノートセッションには、HubSpotを支える2人の創業者、ブライアン・ハリガン氏と、ダーメッシュ・シャア氏が登壇。大学時代に出会ったという2人は、性格がまったく違うことから“対照的な創業者”としても知られている。
ハリガン氏は、近年急激に市場を拡大している「Disruptor(創造的破壊者)」と呼ばれる企業に見られる共通の特徴を紹介しながら、「これからは、尖った技術を持つ企業ではなく、最高の顧客体験を提供する企業が台頭していく時代である」と主張。一方シャア氏は、これからのビジネスには「多様性」が欠かせないと力強く述べた。
IT業界を襲うデータ規制、どう対応すべきか?
同社CMOのキップ・ボドナー氏と、Moz/Sparktoroの創業者であるランド・フィシュキン氏が登壇し、メディアリポーターのサラ・フィッシャー氏がモデレーターを務めたセッションでは、「IT業界を襲うデータ規制」について言及された。
フィッシャー氏は、「データの取り扱いには、十分な配慮が必要」としたうえで、「昨今の厳しいデータ規制は、マーケターとしてはやはり頭を抱える問題では? 彼らは数字としての成果も出さなくてはなりません」と問題を提起。
これに対しフィシュキン氏は、「マーケターはどこに主眼を置いて活動していく必要があるのか、きちんと考えるべき時が来ている」とし、ボドナー氏は「数字だけを追っていては、今後の社会で生き残ることはできないでしょう。社会的な理念や環境に優しいビジネスを行うことが、心地良い顧客体験の提供につながり、ビジネスの成長に寄与するのでは」と続けた。
ユーザーのフィードバックで進化する「HubSpot」
HubSpotプロダクト責任者であるクリストファー・オドネル氏が登壇したセッションでは、ビジネス成長プラットフォーム「HubSpot」に追加された新機能が発表された。
HubSpot社が提供する「HubSpot」は、無料のCRMを中核としてマーケティング、営業、カスタマーサービスを支援する3つの製品(Hub)で構成されるプラットフォーム。同社はユーザーからのフィードバックを最重要視しており、それらに基づいた改善を続けているという。今回発表された新機能は、以下の3つ。
(1)機械学習に基づき、HubSpot CRM上で重複データを検出可能に
CRM上で重複した会社やコンタクト(連絡先)データの整理は、HubSpotのユーザーコミュニティー内で多くの開発要望が寄せられた機能だった。HubSpot Researchの調査によると、営業担当者の72%がデータ入力と顧客の記録の整理に毎日最大1時間を費やすなど、CRM上のデータの重複が負担となっていた。また、1人の顧客が複数の営業担当者から連絡を受けたり、同一のマーケティングEメールを重複して受信したりと顧客体験にも悪影響を与えかねない。これらの問題を解決するため、同社は機械学習で検出する重複データのリストを元に、簡単にデータ統合を行える機能を追加した。
(2) 無料のHubSpot CRMがFacebook Messengerと連携可能に
HubSpotは2019年7月、HubSpot CRMに無料のEメール配信機能および広告管理機能を搭載。スタートアップや中小企業などソフトウェアへの初期投資を抑えながら生産性を向上させたい企業を支援するため、FacebookページにおけるMessengerでのやり取りをHubSpotの「コミュニケーション」機能の受信トレイに集約し、一元的に返信や管理ができる機能を追加した。
(3)Eメールおよびナレッジベース編集画面の操作性向上
Eメール作成に割く時間が短縮されるよう、多数のHTMLEメールテンプレートを追加。直感的にEメールを作成することが可能になった。